のぼりゆく経営者と組織が陥りやすい落とし穴について、今回は語りたい。
われらはまぎれもなく、
人類史上で最も変化の速い時代に生きている。
生活が変わるわけだから、
当然ながら仕事も、
組織という形態そのものも急速に変わっている。
だから、これからの時代をよく生きるには、
世の中の動向により敏感にならねばいけない。
経営者であればとくにそうで、
旧態依然とした手法はすぐに通用しなくなる。
だが、かといって欧米などの最新スタイルを取り入れればよいかと言えば、
これはしょうしょう短絡にすぎて、
古くからある、たとえば『人を大事にする』などの基本を軽視すれば、
手痛いしっぺ返しをくう。
最新技術に目がくらむ危険はだれにもあって、
たとえばある程度大きくなってきた企業は、
よくMBA(経営学の博士号)に興味をもつ。
つまり、外国で経営学を学んだエリートを入社させようかという話が社内にもちあがる。
(↑こんな感じ?)
採用されたそのエリートは言う。
「御社のような業態でとるべき方法は、SCD(スター・カウ・ドッグ)理論ですね。
コングロマリット経営で流行った手法ですが、御社の組織形態をみるに、適していると思います」
経営者にとっては初耳である。
スター、すなわち星。
光輝く可能性をもつ部署で、支援を存分に注ぎ込み成長させる部署。
カウ、すなわち乳牛。
堅実に利益を出すが大化けはしない。
資金をスター部署に供給する役目をもつ。
ドッグ、すなわち犬。
利益もでなければ、大化けもしない。
赤黒がとんとんである。
キャッシュフローを回すためなどの目的で、存在する部署。
MBAエリートは判断にいたった理由を、詳細なデータで説明する。
「御社の組織図を部・課ごとに、10年スパンの収支表で分けてみたのですが、
SCD分類ですと、このように分かれます」
経営者は喜ぶ。
いままでわが社にこのような分析をした社員はいなかったと、それを取り入れる。
堅実に稼ぐ部署を維持しつつ、おおいに伸びそうな部署には、できる範囲で投資する。
むろんこれで成功することもあるから、
ひとくくりには断じえない。
だが、なぜか多くが、中~長期で頓挫してしまう。
それはなぜだろうか。
社員の気持ちだ。
いかに最新の経営理論を学ぼうと、
業界未経験者の新参者がパッとやってきて、
あれこれ会社をいじくりまわせば、
かならず反感を買う。
その気持ち。
ドッグと、カウと呼ばれた社員たちの気持ちなのだ。
ドッグ部門?
キャッシュフローを回しているのであれば、それは会社にとって大切な責任を果たしている。
カウ部門?
堅実に売り上げを出している部署ならば、そこにこそ資金と人財が厚くなるべきだろう。
それらを無視して、まだ芽の出ていないスターをもてはやすから、失敗する。
大化けする部署は、大コケする部署でもあるのに。
だが実際には、
SCD理論がそのままの名前で、大手をふって取り入れられている。
(せめて名前だけでも変えればいいものを。
一緒に働く同僚を乳牛だの野良犬だの、失礼にもほどがある)
※実際にはカウを、キャッシュカウとしたり、プロブレムチャイルド(問題児)を追加したりと、いろいろな分類わけがある。
わが社にMBAの博士がくるのは、まだ先だと思うが、
わたしの目の黒いうちは、
最新の経営理論を学んだだけの、
息巻いて市場に乗り込んでくるエリートの好きにはさせない。
なぜならあらゆる業種で、世の中を生き抜くために、
肝に銘じなければならない法則はたったひとつ。
「定石のないのが、定石」
これだからだ。
およそどれほど確からしいものであっても、鵜呑みは避けねばならない。
定石がないのが定石、
これを生かしながら、
最新の情報のよいところをいかせる企業がまた、
永続的企業への切符を1枚勝ち取る。
今日のひと言
『定石がないのが、定石』
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