『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』 【作家がおすすめする本 〜人生を豊かにする本〜】

告白 画像 【作家がおすすめする本 〜人生を豊かにする本〜】
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作家がおすすめする本のコーナーです。



今回は「こんなことがあったのか」と、日本人として、人間として考えさせられる本です。


ウマぞう
ウマぞう

え! しんさんがめずらしく暗いブヒね。どんな本ブヒか?


ルポ(※ルポルタージュ = 報告文学、あるいは記録文学)だね。

カンボジアへのPKO(国連平和維持活動)で、本当に痛ましいことにひとりの隊員が亡くなり、23年ものあいだ家族にも真相がわからなかったのはなぜかという。。


23年?! なぜ?!



ひと口に言えないほど複雑なんだけど、その真相を解き明かしたのが本作だよ。

関係者の方々、なによりご家族の気持ちを察すると安易な気持ちで紹介できない。でも多くの人に読んでほしいと思うよ。


なんだか悲しくなってきたブヒ。。はじまり、はじまり〜。。



国連平和維持活動(PKO Peacekeeping Operations)
(※外務省HP 「平和構築」)

国連平和維持活動(PKO)概要
(※外務省 「国際平和維持活動PKOの概要」)



告白 画像

概要


  • 【題名】 
    『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』

  • 【著者】 
     旗手啓介はたて けいすけ

  • 【出版社】
     講談社

  • 【初出】
     2018年1月

  • 【映像名】 
     NHKスペシャル
    「ある文民警察官の死 〜カンボジアPKO23年目の告白〜」
     ※以下、映像の受賞歴
     第71回文化庁芸術祭賞テレビ・ドキュメンタリー部門優秀賞
     第54回ギャラクシー賞テレビ部門大賞
     第16回放送人グランプリ2017準グランプリ
     第24回坂田記念ジャーナリズム賞
     第43回放送文化基金金賞テレビドキュメンタリー番組最優秀賞
     第17回石橋湛山記念、早稲田ジャーナリズム大賞(公共奉仕部門)
    (本放送 2016年8月13日)




・映像はこちら 「NHKオンデマンド」
ある文民警察官の死〜カンボジアPKO23年目の告白〜

あらすじ、どのような内容か


【あらすじ】

「日本が初めて本格的に参加したPKO(国連平和維持活動)の地・カンボジアでひとりの隊員が亡くなった。
 だが、その死の真相は23年間封印され、遺族にも知らされていなかったー」

(※帯、紹介文より)




【目次】※一部

※本書、目次より



【写真】

※本書、冒頭部写真より
亡くなられた高田晴行警部補



1993年5月4日昼下がり、
カンボジア北西部・国道691号線。
炸裂するロケット弾、AK47の連射音ー。
「弾丸が顔の肌を舐めていく。
その弾丸の風圧が顔の皮膚に伝わる。
何発かが、長く伸びた頭髪の中を通過して、
髪の毛がパラパラと落ちてくる。
弾は容赦なく雨霞のごとく飛んでくる」
(襲撃された隊員の手記から)

※本書、カバー袖より



抜粋


【地図、組織図】

本書、見返しより


【序章】

 倉敷駅から乗った一両編成のディーゼル車両、白地に水色のラインが入った水島臨海鉄道に揺られていた。

 二十三年前、カンボジアで銃撃され殉職した岡山県警の高田晴行たかたはるゆき警部補の実家を訪ねるためだった。臨海工業地帯に向かう車窓に、戸建ての住宅、アパート、月極つきぎめ駐車場、田畑、コンビニ……どこにでもある日本の風景が流れていく。

 私たちは、二〇一六年八月にNHKスペシャル「ある文民警察官の死〜カンボジアPKO 23年目の告白〜」、そして同年十一月にBS1スペシャル「PKO 23年目の告白 前編・そして75人は海を渡った/後編・そこは〝戦場だった〟」を放送していた。

 番組の取材を始めたころから、関係者には「ご遺族だけはそっとしておいてほしい」と言われていた。せめて番組を制作していることだけは伝えようと、不躾ぶしつけにもご遺族に手紙を投函し続けたが、事前に会うことは叶わなかった。だが、放送後ようやく面会する機会をいただいた。

 無人の高架駅から歩いて五分ほどのところにある、門構えのしっかりとした大きな屋敷に母親の幸子ゆきこさんがひとりで暮らしていた。かつてこの屋敷には、高田警部補と、父と母(幸子さん)、妻の礼子れいこさん、幼い子どもふたりが一緒に暮らしていた。事件後、妻は子どもを連れて家を出た。父親は息子の七回忌を見届けて亡くなった。

 私たちは、八十四歳という高齢の母親が、私たちの番組をご覧になって、これをどう受け止めたのかが気がかりだった。番組では、事件現場にいた当事者たち(日本人文民警察官、オランダ海兵隊、スウェーデン文民警察官ら)の証言をもとに、高田警部補がどのようになくなったのか詳細に再現した。

 しかし、その映像をご覧になって、ショックを受け、改めて深い喪失感に襲われたり、あるいは「もしあのとき息子をカンボジアに行かせなければ」などと後悔の気持ちを呼び起こしてしまい、ご自身を責めているようなことはないだろうか、と、心配だった。

 この日は、隣の総社市そうじゃしに住む高田警部補の実姉・国府こう和子かずこさんが幸子さんの付き添いに来られていた。挨拶を終えると、幸子さんはこう話してくれた。

「番組を観て、息子が現地で最期をどのような形で迎えたのか、くわしく知ることができたことで、胸のつかえがひとつ取れました。事件後、たくさんの方々がなんども訪ねてきて線香を上げてくれましたが、息子がどのような最期を遂げたのか、教えてくれる人はいませんでした」
 
 和子さんが言葉を引き取る。
「まるで箝口令かんこうれいが敷かれているように、みなさん、なにもおっしゃらなかったんです……」

 それは高田警部補の妻やふたりの息子たちにとっても同じであった。遺族ですら高田警部補が、いったいなぜ、どのようにして亡くなったのか真相がわからないまま、二十三年の歳月が流れた。

序章 忘れられたPKO部隊 沈黙の二十三年 より



このあと、なぜ各国が(そして日本も)PKOに行くことになったのか経緯へとつづきますが、ひもとけば、冷戦構造下のベトナム戦争までさかのぼるんだ。


カンボジアのことなのに、ベトナムですブヒ?


ウマぞうくんの疑問はもっともだね。

ひとつ言えることは「武器生産国にとって、別の国の資源や領土、政権争いほど儲かるものは無い。だから片方、時には両方さえ支援して戦争をさせる」ということだね。

ベトナム戦争では「南ベトナムをアメリカ」が「北ベトナムをソ連」が支援したよ。
で、北ベトナムは、南ベトナムのヽヽヽヽヽ反政府組織ヽヽヽヽヽに、カンボジアの密林地帯を使って物資を輸送していたんだ。カンボジアとの関わりが見えてきたかい。



なにそれ、、、



アメリカはカンボジアに対して秘密爆撃を繰り返すけれど、事態が解決しない。

そこでCIAを使い、カンボジアのシアヌーク殿下がモスクワ訪問中に、カンボジアの首相だったロン・ノルにクーデターを起こさせたんだ。

シアヌーク殿下は中国に亡命し、支援を受けて、それまで弾圧していた共産ゲリラのポル・ポト派と共闘することになったんだよ。
ポル・ポト派は、日本でも名前を聞くでしょう。

当時、1973年から半年間で、ポル・ポト派を叩くためにアメリカがカンボジアに落とした爆弾は、第二次世界大戦時に日本に落ちた爆弾の1.5倍と言われているよ。



・・・しんさん、これ現実の話ブヒンよね?



残念ながら。
そしてまだ五十年も経っていない話だよ。

いつものようにフィクションであったらと思わずにいられないよ。


ルポライターの竹中労たけなかろうさんの言葉に、

人間は一人一人を見ると、みんな利口で分別ありげだが、集団をなせばたちまち馬鹿が出てくる

というのがあるけれど、まさにその通りだと思ってしまう。

人間が集団になることで知恵が集まり、ひとりではできない大きなこともできる。
けれど、こうした負の集団習性も必ずでてくる。

本を読むのが苦手な場合、先のNHKオンデマンドの映像や『キリング・フィールド』という映画がいいかもしれない。当時のカンボジアが描かれています。
100万人とも200万人とも言われる大虐殺の話だね。



ぼく、平和な国の平和な時代に生まれてよかったブヒ、、、


わたしも心からそう思うよ。

でも、だからこそ、こうしたことを知って、何かをしなければならない。

そう思うよ。

ただ残念なことに、いまの日本は「個」に焦点が集まりすぎて、「公」の実感がかなり薄れてしまったね。


自助じじょ」、「互助ごじょ」、「扶助ふじょ」と、人間は成長していかねばならないと言うけれど、いまの日本の環境では「自助」から抜けられる人が少ないのではないかな。


「自助」=自分の面倒を見られる状態。

「互助」=その次の、互いに助けて、助けられての関係。

「扶助」=助ける行為。

こうだったブヒンね。


ウマぞうくん、よく覚えていたね。素晴らしい。
わたしも、まだまだ自助と互助に片足ずつ突っ込んでいるような状態だけれどね。

長くなるからこの話はまたにするけれど、日本以外の先進各国でも、どうやら一部しか「自助」から抜けられないようで、
それは、すこし前に使われていた○○ファーストという言葉を使っていた人たちによく見えたよ。

誰もが自分や自分の集団だけファーストにするのは、本能的に疑問を覚えると思うから、あの言葉は消えかけているけれどね。

「優先」ではなく「先駆者」という意味でファーストと使ってほしかったよ。


本書、冒頭部写真より



最後に


本書裏、写真より


この事件当時、わたしは小学生〜中学生だったから、すこし記憶があるけれど、
あのときPKOといえば「自衛隊派遣の是非」ばかりに話題が集まっていたよ。PKO協力法というものだね。

まさか警察官が、それもほぼ非武装で、自衛隊よりはるかに危険な最前線に派遣されていたなんて思いもしなかったよ。


、、、、なんでそんなことがおきるブヒンの


複数の組織・事情が関わっているけれど、なぜ起きたのかは読めばわかるよ。
でも責任の所在は難しい。
そもそも、派遣されてみたらまだ戦争状態にあったと、そこで話が根底から食い違っているわけだからね。

「大人には大人の都合がある。

 どこでも政府はそうしたものだ。

 国にもそれぞれ国の事情がある。

 人間は独占欲を持つもの、すなわち人間の社会は闘争本能を内包しているもの。

 戦争は、人間が人間である限り、無くならない」

以前はこうした事実について、人間存在のひとつの真理だと割りきろうとしていたんだけど、最近はもう飲みこめないね。
言ってるばかりも嫌だし、あとに続く者を信じて、行動で示そうと思うよ。


やっといつものしんさんだ! しんさん、頑張って!



ウマぞうくんもね。
嘆いてばかりでは前にすすまないし、考えるばかりでも改善しない。
だから行動するのみ、そう思うよ。

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 心に残る本です。

 未読の方にはぜひ読んでいただきたいと、切に思います。

 昔の話ですが、こうしたことは今またこの瞬間も、世界のどこかで、形を変えて起きています。

 高田晴行警部補のご冥福を心からお祈り申し上げます。


今日のひと言

世界の残酷は、この細い目にあり余る。だからわたしはもっと目を細める。残酷を見るのは、もうたくさんだ。
だからわたしは決めた。世界から残酷を無くそう。もし無くせたならば、死んでも悔いはない。

最上世助もがみよすけ


次回はホラーの傑作『残穢』です。



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