『コロナの中でちょっといい話 後編』【シン説】

※表画像 photo by すかぢ



『コロナの中でちょっといい話 後編』【シン説】



最近、「もっと話を読みたい」という話を多方面から聞くようになってきた。


とてもありがたいことで、感謝するばかりだ。


本はなかなか出版できていないけれど、こうして発信できる時代なのは、なんとも素晴らしい。


本以外でも、発信したいことはたくさんある。



一回だけコロナについて書いて、
あとは(自分では有益と思う)さまざまな情報を発信していこうと思っていたが、
もうひとつだけコロナで書いておきたいことがあった。


これは聞きかじりでなく、わたしが体験したことだ。



〔駒込駅にて〕




いつぞや、駒込で飲んだ帰り道だった。

時間は二十時ごろ。

十二月だったか。風がとても強く、寒い日だった。

photo by Alice Cheung




駅前で若い女性が二人、道ゆく人に声をかけている。

緊急事態宣言下では無かったものの、コロナなので、いつもより多少ひと通りは少なかった。


近づいていくと、女性たちの声が聞こえてきてくる。


「お願いします」、「お願いします」


イントネーションが違う。

日本人ではなく、東南アジア系の女性だった。


通りかかる人のすべてが、彼女らを無視して家路に急ぐなかで、

私の友人だけが立ち止まり、声をかけた。


「どうしたの?」



photo by Bohdan Cherptak




そうすると女性が、カードを出した。


お世辞にも綺麗とはいえないカードだ。

そこには一生懸命書いたであろう手書き文字の紙が入っていて、こう書かれていた。


「わたしたちは大学生です。コロナで仕事がなくなりました。助けてください。これを買ってください」


「何を売ってるの」

友人が聞くと、女性は袋に入ったチョコレートを出し「ひとつ五百円です」と言った。


はっきり言って、二百円しないような代物だった。




でも友人は笑顔で「何個あるの? 四つちょうだい」と。

女性はもう泣きかけてしまって、
「ありがとう。ありがとう」と友人に何度もお礼を言った。


友人は、何度も「頑張ってね」、「頑張ってね」と励ましていた。


わたしは横ですべてを見ていて、その心を友人に聞いてみた。

友人は「頑張っているんだから。応援してあげないと」と、なんでも無いことだという風に言った。


でも、自分でもカッコがつきすぎてしまったことに恥ずかしかったようで、
「あたえる喜びは、もらう喜びより大きいんじゃ」とおじいさんのような口調で、おどけてみせた。


そこまでふくめて、わたしは正直、
「こいつかっけえやつだな」と、そう思った。


恥ずかしがり屋のSくん、つぎは一万円分くらい買ってあげられるよう、おれも頑張るよ。

いい姿を見せてもらいました。

これからもよろしく。

photo by Daniel Nebreda





今日のひと言

「面白くできる力があれば、人生は楽しい。無いなら、そういう人のそばに行きなさい」

最上世助




・前回 『コロナの中でのちょっといい話 前編』【シン説】


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