今回は『粘膜人間』を紹介します。ジャンルはホラーですね。
第15回・日本ホラー小説大賞の長編賞を受賞した小説です。
人気作品で、5までシリーズ化されています(2022年6月現在)。
すごいタイトルぶひ。一瞬、官能小説かと。
その気持ちわかる(笑)。この本、タイトル買いだったしね。
ウマぞうくんの想像どおり、ホラーだけじゃなく、淫靡な描写もあったよ。
そうなの?! そういう本て、しんさんは紹介しないと思ってたブヒ!
読書の幅はそんなに狭くないよ。「面白さ」にも色々あるじゃない?
エロもグロも、一定のファンがいるジャンルだと思うよ。
なるほど。ぼくは小説も映画もホラーとかエログロにまったく興味ないけど、しんさんは恋愛小説や恋愛映画に興味がないものねえ。
そうそう。だから恋愛シーンを書くのが下手って、うるさいな(笑)。
あらすじも、これまた秀逸なので、興味があったらぜひ読んでくださいねー。
※今回紹介する小説や映画には、陰惨な表現(特に暴力系)が多数ふくまれるので、ご注意ください。特にYouTubeの動画にご注意ください。
概要
- 題名 『粘膜人間』
- 著者 飴村 行
- 出版 角川書店
- 初出 平成20年10月
- 第15回 日本ホラー小説大賞 長編賞
あらすじ
「弟を殺そう」ー身長195㎝、体重105kgという異形な巨体を持つ小学生の雷太、その暴力に怯える長兄の利一と次兄の裕二は、弟の殺害を計画した。
角川ホラー文庫版より
だが、圧倒的な体力差に為すすべもない二人は、父親までも蹂躙されるに至り、村のはずれに棲むある男たちに依頼することにした。グロテスクな容貌を持つ彼らは何者なのか?_ そして待ち受ける凄絶な運命とは……。
小学生にして規格外の巨体をもつ雷太というのが、最初の興味でした。
しかしこの「ある男たち」というのも大きな驚きです。冒頭4Pくらいで、正体が明かされますが「え? なに? なんでそれ(笑)?」となりまして、そこから著者独特の異様な世界に入り込みました。
その「ある男」だけ気になるブヒ。もし読めなかったら、そこだけ教えてくれるブヒ?
いいよ。この紹介の中では明かさないけどね。
どんな人にオススメか
やっぱり怖い話とか、エログロが好きな人にオススメですブヒ?
エロは量が少ないよ。「グッチャネ」とか、独特のエロ造語が楽しい感じだけどね。エロ部分の大半は、エロコメディという感じかも。
エロコメディ(笑)
やっぱりグロの雰囲気が強いので、グロ好きにオススメです。ただ単純にグロいのではなくて、タイトルどおり、粘膜を直接ひっかくような感じというか。
わたしは大好きな格闘シーンも期待したんだけど、そういうのではなく、しいていえば解体系の雰囲気かな。
綾辻行人さんの『殺人鬼』シリーズ、あるいはジャック・ケッチャムの『オフシーズン』とか、そういうのが好きな人に向いているでしょう。
映画で言ったら『SAW』シリーズとか、『ホステル』シリーズとか。
『補足』1
・綾辻行人 『殺人鬼』シリーズ
→推理小説の天才によるジャパニーズ『13日の金曜日』。ジェイソンのような正体不明の大男に次々と殺される話。2も出ました。
『粘膜人間』もそうですが、こちらも痛い描写がすさまじい。殺し方に様々な工夫がされています。1がオススメです。
・『オフシーズン』
→カルト的人気をほこる、ジャック・ケッチャムのデビュー作。
実際にあったソニー・ビーン一族の事件をもとに書かれたそう。
※ソニー・ビーン(リンク先はwiki)
暴力ポルノと批判も受けた、ゴア系小説のトップ。
実在の事件をモチーフにすることが多い作家で、映画化は少ないのですが、日本でも根強い人気を誇る作家です。
こちらが気に入ったら続編の『襲撃者の夜(原題:オフスプリング)』もいいのですが、『隣の家の少女』が後味悪い系で最高のオススメです。
(※『隣の家の少女』は、そのうち紹介します。
・『SAW』シリーズ
→謎の殺人鬼ジグソウによる猟奇殺人事件を追う物語。ソリッドスリラー。
殺し方が拷問器具、あるいは機械仕掛けをモチーフに斬新で、とにかく「痛い」描写が凄まじい。全員、死ぬほど難しい生き延びるチャンスがあるのもムゴイ。。
また単なる残酷さに終わらず、シリーズ全編を通して謎が散りばめられていて、あっと驚かされます。特に1がオススメ。
いったんシリーズが終わっても、新作が作られたりと、現在9作品がリリースされています。
大ヒットメーカー、ジェームズ・ワン監督のデビュー作であり、出世作です。
※↓暴力的な表現がありますので、視聴にご注意ください。
・『ホステル』
→新世代のホラー監督として、注目を集めるイーライ・ロス監督の出世作。
ゴア系、スプラッター系で、非常に「痛さ」が伝わってくる映画。何も事前情報無しで見たので、私は驚きました。
実際の事件風で、恐怖もひとしお。
人気作で3まで制作されましたが、シリーズを追うごとにどんどん劣化するので、個人的には1を観れば十分だと思います。
もし「もっとイーライ・ロス監督の作品を見たい」と思ったら、『グリーン・インフェルノ』をオススメします。
※予告編の動画、オフィシャルがありませんでした。。残酷すぎるからかな。。
しんさん、怖い映画も小説もけっこう見てるんブヒねえ
書き物して、格闘技やって、経営して、あとは本を読んで映画を観てって、その5つしか続いたものが無いんだよねー。飽きっぽくてさ(笑)。
オススメのポイント
- 怖さ、痛さ、暗さ。
☆☆☆☆☆☆☆(星7つ)
「人間の愚かさは、知能の低さだけではない。真に愚かなものは争いを好み、暗いものを好む」という名言がありますが、もともとだれもが備えている性質でもあります。平和な日常に倦んで「たまには見たい」という時に。
・独特の世界
☆☆☆☆☆☆☆☆(星8つ)
戦時中をモチーフにしながらも、著者独特の吹っ飛んだ想像の世界が、巧みな筆運びでリアルに書かれています。とにかく世界観の構築と、読ませる勢いがすごい。
どっぷりひたれる小説は大好きですけど、怖い世界には入りたくないブヒなあ。
「何かに憑かれたように一気に書き上げた」というような小説が、出版されることがあります。そうした小説には、他にはない勢いや熱さがありますね。
『粘膜人間』もあとがきを見ると、夢で見たということで、その後半年をかけて一気呵成に書かれたそうです。
クライヴ・バーカーの『血の本』シリーズを思い出しますね。突然、憑かれたようにすべて書きあげたという。
勢いでいえば、ジャンルは違いますが『スレイヤーズ!』を思い出す怒涛の勢いです。
『補足』2
・『スレイヤーズ!』
→美少女天才魔導師(自称)リナ=インバースが大活躍する物語。
ジャンルはライトノベルで、無双モノの先駆けといえる大ヒットシリーズ。ヒロイックファンタジーというのも目新しいものでした。
これまた、締め切り直前までアイディアが浮かばなくて一気に書いたと、どこかで読んだ思い出があります。本編17巻の外伝あわせて既刊52巻、累計2000万部超。
・『血の本』シリーズ
→知る人ぞ知る、ホラーの鬼才クライヴ・バーカーによる短編シリーズ。世界幻想文学大賞と英国幻想文学大賞を受賞。これまた著者独特の勢いと筆致で、不気味な世界に放り込まれます。
映画化も多数で『ミッドナイト・ミートトレイン』などが有名。
日本語版は全6冊。
一気に書いちゃうブヒか! すごい!
思いたったらごく短い期間で書く、というのは確かにあるね。
なるほどー。しんさんも、そういう風に書いたことがあるブヒか?
物語の最初から最後までが映像になって、一瞬で閃くっていうのがわたしの書き方だけどね。
閃いたらそのまま書くというのは、やったことないなあ。
ある程度、肉づけしながら書くよ。
夢で見たものはどうブヒか?
夢で見た話も何度か挑戦したけど、ダメだったよ。三回くらい試したかな。
なんか支離滅裂になっちゃう。
1冊の本って、1番早くてどれくらいの速さで書けるブヒか? しんさん、そういうの数字でも説明できるブヒでしょ? あと、勢いだけで書いたことないの?
作家さんが書くペースの話は色々聞くけど、実際にどの作家さんも書いてる姿とか、ほとんど表に出ないからねえ。
わたしの場合だと、どんなに気合が乗っていても、1日20時間くらい使って50枚(原稿用紙換算)が限界創作量。
そこを過ぎると、なに書いてるかぐちゃぐちゃになって、結局書き直すことになっちゃう。
あと充電も必要。
短くても250〜500枚で長編1冊とすると、フルスピードでやれたとしても一ヶ月はかかっちゃうと思うな。
まあ、1冊1年が通常のペースと言われてます。
半年1冊でもかなり早い方だと思うから規格外の話だけどね。
わたしは3〜4ヶ月に1冊が、本当はしっくりくるペース。スティーブン・キングさんと一緒のペースだね。
まあでも、短編なら50枚くらいだから1日で書けるということになるね。(執筆依頼、たくさんこーい!)
ごめん、書き終わった作品のこと、ぜんぜん覚えてない(笑)。
あ、一応通説として1日に原稿用紙10枚書ければ、プロになってもやっていけるペースと言われてるよ。
読ませるレベルで10枚ってことだけど(笑)。
あら、なんか言い訳ばっかりで、めずらしい。
勢いだけで書いてみればいいのに。
うぐっ! じゃ、じゃあどこかのタイミングでやってみるさ(←負けず嫌い)! 熱さで吹っ飛ばす長編を!
って、あ! 思い出した! 一番最初に書いた『少年と怪物』がそうだったかも!
思いついて、そのまま書き出した! 肉付けする力なんか無かったからだね(笑)。
半年どころか、完成まで3年くらいかかったけど(笑)。
まあ、どこかで勢いで書く小説、やってみまーす。
『少年と怪物』は、現在こちらのブログで連載中ですブヒー(宣伝)。
ぼくはもう最後まで読んだことがあるけど、あれが一番面白いブヒねー。
長いけど(笑)。
少年少女の頑張りに、途中、何度か泣いちゃったブヒ。
前も言ったと思うけど、処女作がいまだに一番面白いと言われる身になってみなさい(笑)!
くそー、絶対あれより面白いって言わしてやるー!
ブッヒッヒ。楽しみに待ってるブヒ。読む方は気楽なんだブヒ。
ちなみに、今は何を書いてるんですか?
『盲目の六歩』(仮題)という、目の見えない幼い将軍が国を追われる、江戸時代風の異世界怪物サムライファンタジーが大長編になったので、2巻まで書き終えたところで一旦中断。
『マカ・マニ・マカセ』(仮題)という、わかもの向けファンタジーを書いてるよ。
『少年と怪物』を超えられるといいですブヒねえ(笑)
ちきしょう!
最後に
「日常を離れて飛んでいける」というのも素晴らしい小説が持つ特性ですが、『粘膜人間』もハマれば日常から飛んでいけます。
現在5作まで出版されていて、『粘膜蜥蜴』、『粘膜兄弟』、『粘膜戦士』、『粘膜探偵』の順番です。
わたしは4までしか読んでないのですが、作品同士につながりはなく、どこから読んでも大丈夫だったような。
1以外だと、2がオススメですね。
興味を持った方はぜひ読んでみてくださいね!
それではみなさん、良い読書生活をブヒ〜
次回はノンフィクションもの
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を紹介します。
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