はい、今回はSFの偉大な名作『地球幼年期の終わり』、もしくは『幼年期の終り』の紹介です。
二冊紹介するブヒですか? なんだかタイトルがそっくりブヒね。
同じ作品です。
創元SF文庫さんだと『地球幼年期の終わり』、ハヤカワ文庫さんだと『幼年期の終り』だね。
古いのと新しいの。
「終わり」と「終り」が違うところなんかに訳者さんのこだわりを感じます。
同じ本ブヒか!
長年経っても、また訳して出版されるほど愛されている作品ということだね。
なるほどー。どっちを読めばいいブヒ?
より重厚な感じなら、古い創元SF文庫版。
読みやすさであれば、新しいハヤカワ文庫版かな。
違いを知りたいマニアックな方はおふたつどうぞ。
じゃあぼくはハヤカワ文庫版ブヒねー。SFはぜんぜん読んだことないブヒけど。
そういえばウマぞうくんはSFが苦手だったね。
SFやファンタジーの面白さのひとつに「壮大さ」というのがありますが、
それを存分に描こうとすると、どうしても長くなる傾向にあります。
でもこの本は一冊で見事にまとまっているので、それもオススメする理由のひとつです。
概要
- 【題名】
『地球幼年期の終わり』
あるいは、
『幼年期の終り』
※原題『Childhood′s End』 - 【著者】
アーサー・C・クラーク - 【出版社】
東京創元社 『地球幼年期の終わり』
早川書房 『幼年期の終わり』 - 【初出】
1969年 『地球幼年期の終わり』
1979年 『幼年期の終り』
あらすじ
20世紀後半、地球大国間の愚劣な宇宙開発競争を嘲笑うかのように、突如として未知の大宇宙船団が地球に降下してきた。
彼らは地球人をはるかに凌ぐ知性と能力を備えた全能者だった。
彼らは地球を全面的に管理し、戦争や病気や汚職といった有史以来の人類の悪のすべてを一掃し、その結果、地球には理想社会が出現する。
だが彼らの来訪の真意とは……? 巨匠クラークの最高傑作!
※創元SF文庫版より
今回はもう一つブヒ
人類が宇宙に進出したその日、巨大宇宙船団が地球の空を覆った。
やがて人々の頭の中に一つの言葉がこだまする ーー 人類はもはや孤独ではない。
それから50年、人類より遥かに高度の知能と技術を有するエイリアンは、その姿を現すことなく、平和裡に地球管理を行っていた。
彼らの真の目的は? そして人類の未来は?
宇宙知性との遭遇によって新たな道を歩みだす人類の姿を、巨匠が詩情豊かに描きあげたSF詩情屈指の名作。
※ハヤカワ文庫版より
なんだか、クライマックスみたいな始まりブヒ!
おすすめのポイント
- 壮大さ ☆☆☆☆☆☆☆☆
(星10中8つ)
「いったいこの物語は、どこまで連れていってくれるんだろう?」とドキドキ、ワクワクします。
エンディングから始まるような導入なのに「どこまで行くの!」と思うほど、先の先まで話があります。
想像力の素晴らしさを存分に味わえることでしょう。 - 意外性 ☆☆☆☆☆☆☆☆
(星10中8つ)
読む人にもよりますが、規定の路線をくつがえす物語です。
「SF作家の書いた本がのちに現実となる」ということはたまにありますが「これが現実だったら?」と思ってしまいます。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、人類共通の思いとして「そういうこともあるかも」と直感に語りかける結末です。
※「本の出来事が実際に起きる」 … 豆知識
「本の出来事が実際に起きる」
……上記は良い意味で使いましたが、中には当たって欲しくないものもあります。
トム・クランシーは、小説の内容がたびたび現実に起こるアメリカの作家ですが、2013年著の『米露開戦』という本の内容も、2022年の現実で起きてしまいました。
(ロシアがウクライナを攻めるという内容です)
あの本を読んだ方は「本当に起こった」と思っている事と思います。
『米露開戦』はウクライナ侵攻のさらに先まで書いてありますが、本の通りにすすまないことを心から願います。
どのような人におすすめか
しんさん、どんな人におすすめブヒか?
そうだね。
「SFの面白さを1冊で味わいたい人」、あとは「初めてSF長編を読んでみようと思う人」かな。
どちらにしても、SFを少し読み慣れている方がより楽しめると思います。
ぼくみたいにSFが苦手で、全然読んだことがない場合はどうしたらいいブヒか?
そうだね。読書は、時代の移り変わりで趣味として急速に衰えているし、
さらにジャンルもSFとなると、かなりマニアックとされて、とっつきにくいのもわかるよ。
「SFを読みたい場合は短編から入る」というのをおすすめしているよ。
日本なら、定番だけど星新一さん。最近ならリュウ・ケンイチさんの短編集かな。
たしかに、短編ならボクも読めそうブヒ。
個人的にはファンタジーから入る、というのもいいと思います。
この世界とは違うものを想像するわけだからね。
ファンタジーを読んで、飽きてきたらSFという流れかな。
あと「SF映画をみる」というのも下地づくりとしていいね。
想像しやすくなります。
やっぱり本は、読んでいて、どんな場面か頭で描けないと、面白くないよね。
映画は『スターウォーズ シリーズ』とかの定番でもいいし、最近の映画でもすごく映像が良くなっていて、壮大さが出ているよ。
映画ならぼくも見るブヒよ。
そうですか、映画から入ってもいいブヒね。
『地球幼年期の終わり』は、映画ではないけどテレビドラマになっているから、小説ではなく映像で、という方はそっちでもいいと思います。
ネットフリックスとかで見られる見たい。
余談だけど、映像技術がどんどん進んでいて、表現できるSF原作が増えているよねー。
とても嬉しいです。
先日『DUNE デューン 砂の惑星』の最新作を見たけれど(2022年3月)、映像が良かったよ。ドラマ性は、なんとなく古いバージョンの映画の方がよかったけどね。
いつか『レンズマン シリーズ』とか『宇宙のランデブー』とか映画化されないかなと、期待します。
日本のSF漫画『銃夢』原作の『アリータ・バトル・エンジェル』はよかったなあ。ああいうのが映像化される時代って、素晴らしいです。
そうそう、漫画でSFに慣れるのもいいね。
最後に
もう少しだけ、本書の面白さを紹介します。
「異星人の不気味さ」です。
カレルレンという異星人の代表が地球側とやりとりするのですが、彼らは圧倒的な科学力を持ちつつも、武力ではなく文明の発展を後押しする形で地球を平和的に支配します。
地球は、病気も戦争も解決し、どんどん発展していきます。いい方向に。
でも異星人は、通信だけで決して姿を見せません。
また、何のために地球を発展させるのかも、彼らは説明しません。
とてつもない善意の裏に何かあるのでは? とみんなが思いながら物語は先へ進んでいきます。
生まれ変わったように平和になっていく地球ですが、この二つの謎が、かなり不気味。
このまま異星人のいうことを聞いていくと、人類はどうなっていくのでしょうか。
先が非常に気になる物語ですね。
1952年出版ながら、いまだに国際的評価が高い本作。
ぜひ、手にとってみてください。
忘れられない一冊になるでしょう。
これはかなり気になるブヒですね。頑張ってみようかな!
それではまた次回ブヒ!
次回は、いろいろな面白みを紹介ということで『粘膜蜥蜴』です(予定)。
・紹介した本の一覧 『人生を豊かにする本棚』
一人一頭いちにんいっとうこぼれ話 「読書を趣味にしたいウマぞうくん?」
しんさん、このコーナーのモデルにしてもらってるのは嬉しいんブヒが、
(※注 ウマぞうくんは実在の方です)
SF以前に、ぼくどうしても読書が続かないブヒ。
何かコツとかあるブヒか?
あるなら教えて欲しいんだブヒ。
読みたいとは思ってるんだけれど、なんか読めないんだブヒ。
あと「読まなきゃなあ」みたいに思っちゃってて、それもなんだか違うなあと思ったり。
うん、みんな思ってることじゃないかな。
「人生のためには本を読んだ方がいい!」とか「とにかく本を読め!」とか、本はそんなことも色々耳にするよね。
私が思うに「深く考えない方がいい」かな。
考えないブヒ?
そもそも、ウマぞうくんはどうして読書をつづけたいの?
面白い本はすごく面白いブヒですし、あと本を読んでる人って頭がよく思われるブヒですから
なるほど。わかります。
不純な動機だから、続かないんブヒですかね?
いやあ、全然(笑)。
その辺りが「考えすぎない方がいい」と思う理由だね。
「本を読むって、読みたいから読む」んだよね。
そこに人生のためとか、何かの役にたてるためとか、
そういうのが入るとちょっと重くなって、余計に手が伸びなくならない?
確かにそうブヒ!
読書もスポーツとか、そのほかの事と同じだと思うんだよね。
たとえばテニスか水泳なんかを「健康のためにやりましょうよ」と言われても「うーん、まあそのうち」という感じでしょ?
それよりも「やってみたら絶対に楽しいから、一回やってみて」と言われた方が「やってみよう」って思わない?
たしかにそうブヒ。
運動って最初から「健康のために」って思うと長続きしないよね。ランニングとか(笑)。
継続性のひとつは、義務感より、楽しさの方が上にきた場合だと思うかな。
本の場合も同じだね。
もちろん「頭が良くなりたい」という目的があって、意欲的に読み続けられるなら、それはそれでいいけどね。
そうかあ、楽しくないと、やらないブヒものね。
うん、だから面白いと思う本を狙って読んでいくのが良くて、「この本を読んだら頭が良さそう」ということで手に取ると、途中でやめちゃうかもね。
あと大きく分けて「娯楽の本」と「教養の本」があるのは間違いない思う。
簡単にいえば、教科書と、その他SFとかファンタジーとかミステリーなんかとの違い。
あとその中間に、ビジネス書とか有名な人の自伝とか、「勉強になりつつも楽しめるように工夫した」どっちとも言えない本があるね。
やっぱり娯楽ほど面白くて、教養に近づくほど眠くなるよ(笑)。
なるほどブヒねえ。
そう言われるとぼくは庭いじりが好きだから、『秘密の花園』が大好きブヒ。
うん、『秘密の花園』は話も抜群に面白いけど、植物が豊かに出てくる面白さもあるよね。
きっと植物の知識がある人はもっと面白く読めるよね。
造園の素晴らしさを描いた本は今ちょっと思い当たらないけど、大自然の美しさを描いた小説はたくさんあるから、そういうのを試すのもいいね。
あとタイミング、つまり瞬発力も重要です。
仕事で何かうまくいかなくて打開したい時「本を読もう」となれば、何も言われなくてもビジネス書を読むでしょう?
あと、子どもが生まれてちょっと大きくなれば一緒になって絵本を読むことになります。
映画とかドラマで感動して「原作も読みたい」となるときもあれば、もしかしたら作家さんにどこかで会って「読んでみよう」と思うこともあるかもしれない。
その時、その時で、読みたい本、タイミングがあって、その時にすぐに手に取るのが大事です。
これもスポーツや旅行と一緒ブヒね。
思い立ったが吉日というやつ。
しんさんが言ってた「アイディアは生まれた瞬間に死にかけているから急いで守れ」とも似てるブヒ。
やろうと思った時にすぐにやらないと、なんだってやる気がなくなるブヒものね
そうそう。
最近そういう流れで、『マチルダは小さな大天才』という挿絵もある児童書を読んだけど、とても面白かったよ。
作者はロアルド・ダールで『チャーリーとチョコレート工場』と言えば、わかる人が多いかもしれない。
最後にもう一つだけあげれば、お酒のようにちびちびやるのが、読書の長続きのコツです。
だから、その時その時で、心の動きというか、もっと感性に素直になって「あ、このお酒、いま飲みたい」というのと同じように(笑)、「あ、これ読みたい」と思ったらすぐに手をつけるのがいいよ。
たとえ名作であってもSFの大長編などにいきなり手を出すと、読みきれなくて、読書から離れることにもなるね。
話は戻るけど、とにかく「深く考えない。読みたいと思った時に読む」がいいよ。
そんな感じでいいブヒね。
言われてみると、ぼく勉強のように思っていたかもしれないブヒ。
自分の時間なんだから、どう使おうと、何をしようと自由だよ。
読書も気が乗らないのであれば、わざわざ楽しくもないことをする必要はないよね。
私はSNSをやらなくなったけれど、すごく好きな人からしたら「この時代に信じられない!」となるでしょう?
本だけは、なんとなく「大人としてのたしなみ」みたいに言われるからちょっと、違和感があるんだと思う。
読まねばならない、みたいな。
学校でも「本を読みなさい」と必ず言われるものね。
釣りをしたい人は釣り、虫を捕りたい人は虫取り、料理好きは料理、読書もそういうものです。
読むたくない人に読みなさいというのは違うし、読んでないことで「私は本を読んでないから・・」と引け目に思うのも違うね。
趣味にも人生にも基本的に優劣なんか無くて、周囲の人と、そして何より自分自身がそう決めてるだけ。
足元の草も、虫も、風も、地球も、言えば他人様も何にも思ってません(笑)。
趣味の優劣なんて、時代どころか、場所が違うだけでもあっさり変わります。
そう言われると、なんだか自分のしたいことが「他の人から見てどう思われるか」にずいぶん左右されていたことに気づくブヒよ。
もっと自分に素直になっていいブヒよね。
人様に迷惑うんぬんという基本は外さないにしても、もっと楽にやったらいいと思うよ。
まあただ私は作家だから、読書の面白さを知らないというのは、一生の損と思ってるところはあるよ。
読むだけでなんとなく、いろいろ上昇するし。
あと、私の人生を大いに助けてくれているのも事実です。あくまでも私の人生、だけどね。
無理をせず、挿絵のある児童書だってすごく面白いから、そういうところから読んでほしいな。
でも日本て、他人の目がある社会なので、大半の人が本にはカバーをかけるよね?
だから電車の中で児童書を開くなんて、他の人の目が気になって仕方ない(笑)。
でも「それってなぜだろう」と疑問に思うのも、とても大事なことだよ。
電車の中で児童書を開く勇気は、僕には無いブヒなあ!
やっぱり人目を気にしちゃう!
まあ日本ほど他人の目がある社会もないからね。
私なんか『世界の妖怪大百科』とか、絵だけの本だって読んでるよ(笑)。
だって、電車でたまたま一緒になった人たちのために読んでるんじゃなくて、いま読みたいから。
しんさんらしいブヒね。
そこまではぼくは恥ずかしくて絶対できないけど、
もうちょっと気楽に本にかかってみようと思うブヒ!
それではまた次回ブヒ〜。
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