『未来を生き抜く力、バランス力』
一度読んだ本は、二度と読まない。
それどころか、悪書であると判断をつけたら途中でやめるほど本好きのわたしだが、
ごくまれに、くりかえし読む本にであう。
そのひとつが、吉川英治先生の『宮本武蔵』だ。
その昔、新聞連載だった小説だが、
いわく、
「原稿があがると、印刷にまわるまえに記者たちが奪いあった」
いわく、
「脱稿したとき(書きあげたとき)、吉川先生の体重は30キロへっていた」など、
エピソードもおおく、かけねなしに面白い物語だとおもう。
※ただし昔のものであるから、文字がつまっていて、漢字も難解。
大長編でもあるので、読書初心者のかたは気合をいれたほうがよい。
大長編でもあるので、読書初心者のかたは気合をいれたほうがよい。
記憶がさだかではないが、この小説に、
「氷の熱さ」、「火の冷たさ」というような、
表現がでてきたとおもう。
サムライたれば、相討ちになろうとも敵を打ち果たすというような、狂おしい激情をもつ一方で、
はるか高みから、己と周囲のすべてを見下ろすような、澄みきった心、
この相反する双方をあわせもたねばならないという表現だ。
昨今あらわれた新しい職業に「プロゲーマー」という仕事があると後輩にきいたが、
14年間王者に輝く世界一のプロゲーマー梅原大吾さんは、
「敵に勝つことを目標としない。そうすると満足してしまうから。
どこまで自分がいけるのかを目標にする。しかしつねに勝ちたいとおもう」と言われているそうだ。
どの業種も、極めるほどに、この「道」というあらわし方がぴたりとはまるような、
相反する感情のバランスをとることがとても重要になってくるのは変わらないらしい。
楽しく明るく仕事をするのが基本だけれども、
しゃべってばかりでは仕事にならないから、真剣に手を動かす。
一生懸命仕事をするのが基本だけれども、それだけでは息がつまるから、
雑談したり、たまには飲みにいく。
こうした対極にあることにバランスをとる力。
この先の未来は、いわば「心の技術」といったものが重要になってくるわけであって、
そのなかでも、あちらを立てればこちらが立たずという、困った状況におかれた際、
「こうしたらどうだろうか」、「こう考えてはどうだろうか」と、
奥深い考えができるかどうか。
「道」といったような、清濁あわせ飲む考えを示せるかどうか。
これが要になるように思う。
こたえをいつも見出すのではなく、矛盾を矛盾のまま抱えられる心を
持ちあわせていかねばならないと思う。
今日のひと言
『矛盾にこたえを見出そうとせず、清濁を認める』
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