閑話休題『記憶にのこった話』
かたい話ばかりでも飽きるので、
今回はまったく関係ない話をしたい。
昔、ある職場で、Hさんという男性と一緒にはたらいていた。
もと保険の営業マンで、そこから塾の先生になり、
現在は65歳くらいかとおもう。
Hさんはちいさなころ、イボに悩まされていたそうで、
とくに手がひどかった。
裏も表もかなりあったとのこと。
嫌で、嫌でしかたなく、学校には手袋をして通っていたそうだ。
そのHさんが中学二年生のときに、ご実家の、九州のおばあさまが亡くなられた。
当時は交通網も整備されてはいないから、
横浜在住だったHさんはおばあさんとめったに顔をあわせたことがなく、
とくに悲しいということもなかったそうだ。
おばあさんの家は九州北部の海岸にあり、
Hさんはお葬式のあいまに、海を見にでかけた。
遠目からみても、素晴らしい景色だったそうで、
草地の高台から、海が一望できる場所があった。
Hさんはそこにつくと、嬉しくなって駆けだした。
が、そこでだれかにグイと、えりもとを引っ張られた。
ふり返ったが、だれもいない。
変だなと思って、ふたたび前をむき、驚いた。
冗談ではなく爪の先、もうわずか先が、目もくらむ高さの断崖絶壁だった。
血の気がひき、腰が抜けたそうだ。
あまりに死を間近に感じたことがショックだったのか、Hさんはその日から熱をだした。
横浜へもどってからようやく熱がひくと、
不思議に手のイボがきれいさっぱり、なくなってしまった。
Hさんはこう言っていた。
「おばあちゃんが助けてくれたんだろう。ついでにイボもとってくれた」
Hさんはそう信じている。
不思議な話だ。
理屈には合わない。
だがそれでいて、なにか一貫した流れを感じとれる。
その昔、雷は神様が怒っているんだとしかわからなかったものが、
放電だとわかったように、
この世は3次元どころか4次元で、それどころか11次元であるということまで、
わかってきた時代だから、
こういう話にもいずれ、科学的な説明がつく日がくるのかもしれない。
新しいことを発見すると、また謎がでてくる、本当によくできた面白い世界だから、
そうしたさきで、またどのような地平がひらけるのか、とても楽しみに思う。
今日のひと言
『なんにつけ、われらが知っていると思っていることは、ごく一部分にすぎない』
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