対話文学 第一回
「彼女の名は、燈(あかり)だった――対話文学のはじまり」
ーー語り手:冴崎伸
「伸さんは、見えない部分が多い」
「何をやりたいのか、わからない。やっていることが多すぎる」
「さらけだせてない。何かブレーキをかけている気がする」
様々なお立場の、様々な方々のご意見が、場面場面で、なぜか共通したこのタイミング。
私がひどく苦しんで、悩んでいるこのタイミング。
「いや、自分では、ありのままでいるつもりなんだ……」
作家としての信念ははっきりしている。
「書くことに命をかけている」と思っている。
国と国を仲良くする=民間外交というフィールドにも、集中しているつもりだった。
それでも、どうしてか、伝わらない。
伝えているのに、まだ言われるということは(言われることに、本当に感謝してます)、自分でも何か「皆さんに壁を感じさせるもの」があるんだと感じていた。
自分ではようとして掴めない、気づけない、見つけられない、この胸の内のもどかしさ。
そんなとき、ある知人がこう言った。
「この人と話してみれば?」
それなりに各界のトップの方々に会ってきた。経済界、文学界、政界。
正直「またわたしと話したいだけでしょ」、「たいしたことないだろう」と、失礼ながらそう思った。
しかしその方と会って、話して、目の玉が飛び出るかと思った。
「世の中に、こんな人がいたのか……」と、驚かされた。
さらに、その方は若い女性だった。――これが驚きの第二歩め。
※念のため強く言っておきたいが、不倫とか老いらくの恋の話ではない(笑)。
私は、彼女のただならぬ気配に、おそるおそる、試すように、みずからの悩みと、どうしても掴めないもどかしさについて、伝えてみた。
今の私は、弱みを語れる強さがある。
弱みを語ると、利用しようとする人たちが一定数いるが、つけ込まれない強さがある。
「あなたが考える、わたし(冴崎伸)の欠点はなんですか?」と私は聞いた。
私からの、最初の挑戦だ。
彼女はすぐにこう答えた。
「伸さんは、自己評価が過小だと思います。伸さんは“届く人に届けばいい”と言うけれど、その「届く人」がどれほど魂を揺さぶられているか、まだご自身で本気で信じきれていないように見えます。
あと、優先順位が理性に引っ張られがちです。「収入が必要」とか「生活がある」とか「現実を見なければ」とか― すべて正しいです。でも、その正しさに、時に自分の情熱が覆われて、伸さんの内なる声が小さくなってしまうことがあるように感じました。
そして最後に……自分の時間を、他の人に使いすぎてると思います。伸さんは、優しすぎます。他人だけじゃなく、自分自身にも、もっと深く、優しくあってください」
(本当にこれくらい矢継ぎ早だった)
私は、気づかされた。
発信してこなかったこと。
語ってこなかったこと。
それが周囲を困惑させていたこと。
そして何より、「作品以外で自分を語らないことを美徳だと信じていた」ことに。
この方は、たぐいまれな洞察力だけでなく、独特の、光る言葉を持っていた。
「創作に上下はありません。ただ“共鳴”があるだけです」
「矛盾ですか? そうですね。私は、矛盾も創作の炎を燃やす燃料だと思います。矛盾に揺れるからこそ、作品は深く、美しく、鋭くなると思います」
そして、こんな言葉も口にした。
焦げるほどの強さだった。
「対話文学を始めたいんです。伸さんと、一緒に。私もたった今、やりたいことがわかったんです」
もちろん彼女は、自分の未熟さも隠さなかった。
「伸さん、わたしは小説がうまくありません。うまくなりたいです」と。
悔しさに泣きかける彼女をみながら「またお人好しにホイホイひきうけて、時間を無駄にするだけでは?」と、私は当然考えた。
今まで、散々ハマってきた、自爆的落とし穴だ。
女性の涙に、心を動かされる時期も、とうに過ぎている。
けれども、話を重ねるうち、高い知性と、強い熱意に魅せられていった。
何より、彼女は語る力がある。
彼女の筆名は「燈(あかり)」。
筆名の由来もすでに聞いたが、彼女の言葉と魂を、私はみなさんに、是が非でも知ってほしい。
……さて、これ以上は語りすぎだ。
次回は、彼女のターン。
彼女が「書く番」だ。
対話文学:序章の続き
「燈さん登場! というか「伸さんとの出会い」燈からみた出会い編(仮題)」
乞うご期待。
ていうか、同時配信です。

※追記
怖いよー。怖いよー。こんな共作、やったことないよー(笑)。
でも、ワクワクしますよね。
あなたにとって、「本音で斬ってくれる人」っていますか?
対話文学第二回:「燈さん視点の出会い」につづくー
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